9月6日、消費者庁は、キリンビバレッジ株式会社に対し、同社の「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」(果実ミックスジュース)の表示について、景品表示法に違反する行為が認められたとして措置命令を出しました。
これは、ぶどう、りんご、バナナ、メロンを使用した果実ミックスジュースにおいて、
『100% MELO N TASTE』
『900ml まるごと果実感 濃縮還元 メロンテイスト果汁100%』
という文言を含む14箇所の表示により、大部分の原材料がメロンであるかのような表示をしたのにもかかわらず、メロン果汁の使用割合は2%程度であったというのが理由でした。
私もこの報道をみたとき、これは確かに誤解するな、と思いました。
本件の情報は消費者庁のウエブサイトに載っているし
テレビやネットでも大きく話題にされているため、ここでは
優良誤認の再発防止につながる事柄を書きたいと思います。
消費者庁ウェブサイトキリンビバレッジ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について (caa.go.jp)
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<景品表示法の本質は規制であり、商品全体を見て判断することが必須>
このジュースの表示を、表示を作る人の観点で見てみると
一つ一つの”いわゆる表示”は、誤認を避けるように考えて作られたと
受け取れなくもありません。例えば
・100%メロン果汁と書くとウソの表示になりますが、
メロンテイストと書かれている
・メロンの写真が圧倒的に目立ちますが、そのほかのフルーツも
一応載っている
・一括表示の原材料名の欄は、配合割合通りに(おそらく)、
果汁の使用割合が最も少ないメロンが最後に記載されている
(ウソをついてメロンを最初に書いたりはしていない) など。
もしかして一つ一つの表示に対するチェックだけを行っていたのではないかなぁ・・・この商品の表示を見てそんな風に思いました。
もしそうだとしたら今回の失敗は避けられなかっただろう、とも邪推しました。
というのも、一つ一つの表示が適切か否かという確認方法は、
基準的な法令(食品表示法における表示基準など)に対して行うなら
有効ですが、景品表示法にはなじまないと思うのです。
なぜなら景品表示法の本質は規制であり、基準を示しているものではないので
一つ一つの言葉やデザインに問題がなくても、商品の実態と表示全体を見たときに誤認につながる可能性あるからです。
このため、景品表示法上の表示を確認する場合は、表示全体を捉えたうえで
以下のように確認する必要があったと思います。
①その表示の意味を言語化する
(どういう意味でその言葉・デザインを使っているか)
②①の次に、実際の商品・役務と比較して、食い違いがないかを確認する
(食い違えば不適切な表示である)
<法律の意味を引き継ぐ教育を>
くどいようですが、景品表示法の本質は規制なので、法律には表示方法の詳細があまり説明されていません。
(個別に取り決められていることは、もちろんいくつかありますが)
このため、まずは同法の判断に使用される公正競争規約(関係ない種類の商品でも読む!)やガイドラインの意味を理解したり、措置命令の事例を見て意図を把握しておくことが大切です。
今回の場合は、メロン果汁2%という数字をどう見ていたのか、ということが気になりました。
景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示「無果汁の清涼飲料水についての表示」には、果汁が全く使用されていなかったり僅少な量の果汁しか配合されていない場合に不当とみなされる表示等についてルールが書かれています。
この告知でいう”僅少な量”とは5%未満です。
このことを知っていたら、2%のメロン果汁はどのくらいのレベルなのか
表示責任者ならピンとくるはずです。つまり、強調できるレベルでないということは察しがついたのではないでしょうか。(補足※)
もちろん今回の場合は、果実100%のミックスジュースなのでこの告示は
適用されませんが、飲料において景品表示法が『少ない』と見ている量は
5%という風にも理解しておけば、景品表示法上のチェックを行うときに
役立ったと思います。
このようにして、表示責任者は、法的規制に係る様々な文書を参考に景品表示法の規制の感覚をつかんで積み上げ、次世代に引き継いでいく(教育する)ことが少なくとも必要で、そのうえで食生活の変化やそれに伴う消費者意識の変化を鑑みて表示を確認していくことが適正表示への道だと思います。
以上、参考になれば幸いです。
補足※
今回のようなミックスジュースではなく、風味付きのミネラルウォーター等の場合は、商品の実態を説明するために僅少な量でも果実について商品に記載することはアリだと思います。
※お散歩中に、甘酒入りの豆乳をいただきました。