数年前から、アニサキスによる食中毒事故を見かける回数が増えたように思います。
厚労省の食中毒統計資料では、2012年の食品衛生法が一部改正されるまではカウントされていないのですが、2013年以降の統計を見てみると
患者数は年々増加しています。
※厚労省『食中毒統計資料』より弊社がグラフ化
※2018年はカツオが原因となったアニサキス食中毒により急増。
今月は、滋賀、埼玉、石川でアニサキスによる食中毒事故が発生し
スーパーや飲食店は営業停止処分を受けました。
営業停止の間、事業者は従業員教育等の再発防止措置に充てられるそうですが(厚労省ウェブサイト「アニサキス食中毒Q&A」より)、
HACCPシステムの見直しはしているだろうか、と思ってしまいます。
その『従業員教育等』についてどんなことをするのかと思い、
リンク先をたどっていくと
アニサキス食中毒の予防方法が記載されているリーフレットがありました。
そこには
- 目視で鮮度を確認しましょう
- 加熱しましょう(アニサキス幼虫は60℃では数秒で、70℃以上では瞬時に死滅)
- 冷凍しましょう(-20℃で24時間以上冷凍すると死滅)
など。
もちろんこのような対策は有効だと思いますが
現状のHACCPシステムのどこかに欠陥があるから事故が起こったわけなので
仕組みを見直すべきだと思います。
事故が発生したときによく耳にするのが
『これまでずっとこの管理でやってきて問題がなかった』
という言葉です。
これは、決めたことは守っていたが検証をしていなかった、
あるいは有効な検証ができていなかった、とも言い換えられると思います。
HACCPシステムの検証を行う際、衛生管理計画やHACCPプランなどの計画をベースに『その通り実施できているか』『変更しなくていいか』
と確認することは、誰もが行っていると思いますが
世の中で発生した事故をもとに傾向を分析して現状の管理を見直すことはあまりできていないのではないかと思います。
有効なHACCPシステムの運用のためには
社内の変化だけでなく、社外の変化にも気を配る必要がある、そして
その変化は、単年で分かるもの(事故の発生ごとにわかるもの)もあれば
複数年経過をみなければ見えてこないものもある、ということを
念頭に検証をしていくことが重要だと思います。
※今回でいえば、アニサキスをハザードとして認識されていたかもしれないけれど重大性(起こりやすさと重篤性)が昔と比べて変化した。重大性が変化すればおのずと管理を強化する必要があるが、ここに見落としがあったのではないかと思う。
HACCPシステムは変化点管理のための仕組みであると捉え
あらゆる変化点をキャッチできるように作れているか
現状の管理を見直してみるのも良いのではないでしょうか。
<追記>
アニサキスは、
- サバやアジ、イカなど、寄生している割合が高いこと
- アニサキスへの再感染によりアレルギーに発展する人がいるため将来的な食生活への影響が大きい
以上の理由から、法的に対象の海産物を設定したうえで処理の基準を定めた方がいいのではないかと個人的には思います。