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【連載 HACCP】原料調達

前回のブログからの流れです。



この春、100年続く老舗企業が倒産しました。
理由は、原料から基準を超える農薬が検出されたためです。(基準:0.01ppmのところ0.06ppm検出)



この原料は、商社から購入しているもので、メーカーと商社の意見は食い違っています。



商社:輸入代行手続きを行ったのみであり、当該商品の商流に入っておらず、卸売や転売をしている事実はない。メーカーによる原因究明のために中国の現地工場調査に同行したが、原料からは当該物質は検出されず、製品の製造過程で塩分調整に添加した食塩に含まれていた可能性がある


メーカー:下記の商流にて輸入・販売している製品の中に、残留農薬の数値が基準値を超えている商品があることを確認した。弊社に本商品を転売した商社に対して行った協力要請に対して同社より明確かつ十分な回答がもらえないこともあり、事業の継続は困難であると判断。


商流 ●●社(中国)→●●社(中国)→商社(日本)→メーカー(日本)



現状では真実は分からないのですが、とにかく原料の調達は非常に大きなリスクがあるということは確かです。



本来、危害分析は、原料の危害を把握したうえで行います。許容できない原料を受け入れてしまっては、いくら工程管理を徹底しても食品安全上意味をなさないからです。


原料に潜んでいる危害を列挙するとき、サプライヤーから出される規格書をそのままを採用(例えば危害分析シートに転記)することがあると思いますが、検証が必要だと思います。各種ウェブサイトでのハザード情報、事故事例、原料が加工品なら製造工程等。


また、原料の危害分析を行った結果、工程でコントロールできないハザードは、サプライヤーにお願いするか製造方法を変えるかしなければなりませんが、すでに何年も作っている製品の場合、工程を変更することは稀でサプライヤーに管理をお願いすることが多いと思います。


このとき、サプライヤ-でハザードをどのように管理してもらっているかの検証も大切だと思っています。検査報告書をもらう、あるいはメーカーが原料の検査を実施するだけだと、管理の妥当性を評価するには情報が足らないように思うのです。


また、経営の観点から考えたとき、原料の調達先を1社に絞ることのメリット・デメリットも検討した方がよいかもしれません。

今回の事故は、原料のハザード分析について考える大きなきっかけになりましたが、一方で基準を上回ったからといって健康被害につながる可能性は極めて低く、また悪質とも思えないので、会社が倒産するほどのことなのかな?と思ってしまいます。

法令違反と言えばそれまでだし、過失はあったとしても・・・心が痛く残念でなりません。




サプライヤーや購入者、行政など周りの人たちが協力して支えることがあっても良いのではないか・・と思ってしまいます。